真夜中おやつ

音楽と紙と料理、そして猫が好きな人の日記。

魂のゆくえ、くるりのゆくえ

この記事は別のブログで書いたものですが、非常に思い入れがあり自分でも気に入っているので、こちらにも転載しました。
2009年6月に書いたものです。
 
 
 
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 今回は6/10発売、くるりのニューアルバム『魂のゆくえ』の感想です。あくまで私の感想ね。長いよ。


まずは、これが発売になるまでの私の気持ちから振り返りたい。

前作『ワルツを踊れ』は不思議なアルバムだった。
ロックとオーケストラの融合、という無謀というか「あ、そこ行っちゃったかーあいたー」ってとこに、ついにくるりは踏み込んでしまった。私はくるりを好きじゃなくなるかもしれない、と思った。
もう、発売前に各方面に吹聴する岸田の「すごいのができた!」が半端じゃなく(この人はいつもそうだけど、絶対逆効果だと思う…)、私も聴く前から食傷気味で。
ところが、聴いてみたらこれが思いのほかよかった。繰り返し聴くと、さらによくなった。
これだけ実験的な試みをして、充分に練って構築されたアルバムなのに、不思議と心地よく、くるりらしさも濃いアルバムになっていた。

ただ、『ワルツを踊れ』を作ってしまい、オーケストラとの共演まで果たしてしまったくるりに、この先どうするの?という不安を抱いたのは私だけではないはず。
なんというか、クラシック音楽を否定こそしなくても、皆あえて無視してるとこ、あると思うんですよ。そこを通過しちゃったら、身動き取りづらくなるから。かといって掘っていっても、そこはもう行き止まりだから。(というか、そこはもう掘れないんだよね。指揮者か演奏家になるしか)

その不安を払拭したのが、その後出たマキシ『さよならリグレット』で、私はもうこれが大好きです。
どう来るかと案じていたら、なんと超POP!それでいてメロディと演奏が抜群に美しい。なんていうか、くるりが答えを出したって感じしたんですよね。あーあたし、くるりを好きでいていいんだって思った。
この1枚は、ほんとに全曲いいんで聴いてない人は聴いてほしいです。

でも次の『三日月』で「ん?」って思っちゃたんですよ。
なんか好きじゃない感じ。なんか取って付けたような感じ。
で、すぐまた『愉快なピーナッツ』が出て。こちらは初期くるりっぽさもなくはないんですけど、これもやっぱ私の中ではそれほどHITしなくて。
なんなんですかね。繰り返し聴くと、やっぱそれなりにいい曲なんですよ。好きなんですよ。でもなんか、『さよならリグレット』の感動が大きすぎたのかもしれないです。

だから、ニューアルバムは出るまで楽しみな反面、こわくもあったんです。さあどうだ、どう来るんだ、って。


で、ようやっと『魂のゆくえ』の感想なんですけど、素直で骨太ないいアルバムだと思います。
ただ、私の中で、くるりのアルバムランキング(※)上位に入ることはないと思います。好みではないし、すごく良くできたアルバムとも思ってないです。でも、きっとここで一度、腹の底から歌いたかったんであろう岸田さんの気持ちはね、わかる気がするんですよ。いろいろやってみて、悩んだりもして、さあどう行くってときに、こういったストレートで飾らない音になった経緯には、合点がいくんですよ。
だから、あと1年とか2年とかして、くるりが別の曲とかを出した後なら、「あぁ『魂のゆくえ』は必要だったよね」って言えるアルバムなんじゃないかと。

私はもう大人で、しかもくるりを愛してるから、くるりが出す曲全てがいいと思えるほどにはのぼせてないし、かといって1曲に失望して嫌いになるわけでもない。
あまり好みじゃない曲でも、そこにふわりと香るくるりらしさが私は好きだし、それがあるうちは待つことができる。きっといつかまた私の胸をいっぱいにしてくれるメロディを彼は聴かせてくれる。そのために、このアルバムは重要なステップな気がします。

まぁそんなわけで、流れとしてはOKなアルバム、個人的にはまぁまぁなアルバム、って感じです。
曲はやっぱりダントツ『さよならリグレット』が好きで、新しい曲だと『Natsuno』『背骨』も好きです。でもくるりのアルバムは、繰り返し聴いてるうちに突然印象が変わることもあるんで、もしかしたら、もっと聴くと他の曲が好きになってるかもしれません。アルバムのことももっと好きになってるかも。


あえて今日は苦言も呈したい。
もうね、くるりの事務所のやりかたにうんざりしてるんですよ。まぁ事務所がしっかりしてて、うれしいことも多いんですけど、なんていうか…あざとい。
プロモーションも増やしすぎだと思うし、携帯サイトとか別に作らんでいいもん作って呼び込みに必死だし、何が嫌ってそのどーでもいいもんに時間とお金を使ってること。それを制作に回したほうが絶対いいじゃん。まぁ多少は必要なんだろうけど、最近はバランス悪ーい気すんだよね。
レーベル始めて、そっちで押してる世武裕子をやたら使うのもいやだ。や、世武さんは悪くないんだけどさ、絶対このコーラスなら他にいい人いたよな、とか、ピアノはエディの方がよかった、とか思ってるファンは多いと思う。
(個人的にピアノが気になる!くるりがこれまでに組んできた、堀江くんやエディに思い入れがあるせいもあるけど。。やっぱり世武さんのピアノは、くるりの曲と調和していない気がする)
別に、物販とかで頑張って儲けるのはいいと思うんですよ。皆も望んでるし。でも音楽はやっぱり、しがらみなしでベストな状態で臨んでほしい。そして音楽で勝負してほしい。

あーこれ、いつか言いたかったから書いてなんかすっきり。でもこれ半分も言ってないけど。


くるりのゆくえ、見守っていくんで、どうか私たちをまたあそこへ連れていってほしい。
くるりしか連れていくことができない場所へ。